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【アースデイ東京2018 SDGsトーク#2】 ブロックチェーンと拡張家族~「世界平和」への挑戦と実験

アースデイ東京の楽しみ方はライブや出展だけではありません。2日間にわたって、さまざまなテーマでトークが行われています。今回は4月21日、22日に開催されたオフィシャルトークテントでのプログラムから、トークの一部を紹介。オフィシャルテントで行われたOzone合同会社プロデュースの「SDGsトーク」では、企業人、NPOスタッフ、起業家など、さまざまな分野で活動するゲストが、SDGs達成に向けてどんなチャレンジの可能性があるかを語ってくれました。

【テーマ】「2030年未来戦略会議~分権と総合、時代のバイオリズムとSDGs」

【ゲスト】

 河崎純真(GIFTED AGENT合同会社 代表社員)

 藤代健介(株式会社prsm 代表取締役)

【案内役】

 雨宮優(Ozone合同会社代表社員/サイレントフェス®プロデューサー)

 柿内正午(Oxygenライター)

 ※この記事は当日のトーク内容を一部編集したものです

■分権化のなかで未来を考える

雨宮:ハッピーアースデイ!

 SDGsをテーマに2部に分けてトークをしていますが(#1はこちら)、#2のテーマは「2030未来戦略会議~分権と総合、時代のバイオリズムとSDGs」。いまの時代の大きな潮流を読み解くなかで、「分権化」というキーワードがあると思います。

 たとえば、経済ではベーシックインカムやクラウドファンディング、エネルギーではオフグリッド、政治では直接民主主義とか、いろんな文脈で中央集権型から少しずつ分権化していって、より身体性をもった直感的な幸福論のなかでシステムが機能していくように、テクノロジーや社会制度が整えられているという背景が前提としてあります。そのなかで、「その分権の流れは統合に結びついていくのだろうか」「未来ってなんだろう」みたいな、そんなざっくりした感じで話せたらいいなと思っています。

 では、まずは自己紹介からお願いします。

 

河崎:河崎純真です。普段は、発達障害の子どもたちにプログラミングデザインを教えるという学校を渋谷でやっていて、ほかにブロックチェーンを使って新しい社会をどうつくるかみたいなこともやっています。

 今年は3回、NHKの番組に出させてもらいました。一発目が「新世代が解く! ニッポンのジレンマ」という番組で、「根拠なき不安を越えて」というテーマで話をさせていただき、2、3回目は、コインチェックの580億円の盗難事件というのがありましたけど、あの追跡に私も協力していて、そのことについて「クローズアップ現代」でお話をさせていただきました。

 今日から始めた新しい取り組みもあるので、あとでみなさんと共有できたらなと思います。

 

 

藤代:藤代健介です。#1のトークでも紹介してもらったんですけど、渋谷に「Cift」という「内発的意識で、はたして人は家族をつくれるのか」という拡張家族の社会実験プロジェクトがあって、その発起人です。(河崎)純真もそうだし、今日もここに家族がいっぱいいます。このプロジェクトの目的は平和活動なんですけど、そこに対するアプローチとして、いかに自分という全体を拡張し続けることができるのかということに挑戦しています。

 SDGsというかグローバル的な流れともいくつかご縁があって、たとえばダボス会議のユースメンバーもやって、その関係で国連のジュネーブ事務局に行ったときにもいろんな人たちからSDGsの話を聞いています。

 

 

雨宮:お二人はSDGsについてはどんな印象をもっていますか?

 

河崎:SDGsは……すげえいい感じだなと思う(笑)。個人的には、SDGsのゴールのうち「産業と技術革新の基盤をつくろう」とか、「人や国の不平等をなくそう」とか、「平和と公正をすべての人に」とかには自分もからんでいくし、興味がある。

 

雨宮:たくさんあるよね。ひとつだけにコミットできないっていうか、全部つながっている。SDGsは「世界全体の普遍的な目標とターゲットであり、これらは統合され、不可分のもの」だというのがあって、全部が複雑に絡み合っている。要は17個全部で一歩を踏み出していくことで、やっとそれぞれの課題が解決していくとSDGsは言っていたりします。

 

 

■銀行・国からブロックチェーンへ

雨宮:まずは、(河崎)純真くんに聞いていきたいんですけど、さっき話していたブロックチェーンの活動というのは、新しい経済圏をつくるという概念でとらえていいんでしょうか。

 

河崎:そうですね。SDGsって、2030年までに国連に加盟している193か国が達成する17のゴールと169のターゲットという話ですが、2030年には国の数が数千個に増えていると思います。その変化に大きな影響を与えるのが、ブロックチェーンの技術です。

 

雨宮:それは、いまの国家が保っている統治機能や社会保障とか、国民というライセンスを配るような機能だったりとかが、全部ブロックチェーンで賄われていくというようなこと?

 

河崎:そう。馬から車、手紙からメール。銀行・国からブロックチェーンという変化が、ここ数十年単位で起きてくるだろうと思っています。それだけの可能性を秘めている技術。いまブロックチェーンで実現しようとしているのは、端的に言うと誰でも国がつくれる仕組みです。

 

雨宮:ヤバイですね(笑)。

 

河崎:はい(笑)。でも、全然難しいことではなくて。いまエストニアは電子国家として世界でいちばん進んでいる国ですけど、超電子化されていて超効率的。ソ連崩壊直前の1991年9月に独立したので、まだすごく若い国です。大統領や首相も若くて、新しい社会のシステムをまさに実現している。だから、もう仕組みはできていて、それは電子的なものなので、ほかの国でも使うことができるんです。

 

雨宮:なるほど。そうなるとSDGsみたいな概念もまたとらえ直す必要がある感じがしてきますね。(藤代)健介はSDGsはどうですか? 

 

藤代:SDGsは目的ではなく目標だということがポイントかなと思います。目標が独り歩きすることの効果もあるけど、逆効果のほうが大きいかなって気がしています。目的と手段って入れ替わりがちで、手段が目的化すると本末転倒になることもある。

 17のゴールという目標に分けたときに、その先にある平和という目的をはたして統合できるのか? MDGsからSDGsになってきたみたいな流れでいうと進化しているからいいことだと思うんだけど、まだまだ発展途上だし、むしろSDGsの先にある目的みたいなものをどうやって人々に実感させるのかに興味があります。

 

■「世界平和」のポイントは「世界」のほう

雨宮:目的と手段というところで、SDGsの先に「平和」みたいな概念があるじゃないですか。その平和の言語化って難しくて、マップに落とし込むにはまだ共通値がないという印象がある。

 

藤代:たとえば「世界平和」っていうときに、ポイントは平和じゃなくてむしろ世界のほうだと思います。世界というのは言い換えると全体なんだけど、その「全体」っていうものをみんなはどこだと思っているのかが大事です。いまは人圏至上主義みたいなところがあって、「世界市民」くらいの全体感を強制されているような感じがしています。

 僕は世界中に友達がたくさんいますが、世界市民全員が自分の家族だと思えるのか、「自分ごと」になっているのかというと、まだなれていません。家族や職場の仲間、友達とかっていう自分の世界における全体感が一人ひとりそれぞれに違うはずなのに、みんなが地球市民を前提にされている感じがします。

 ひとまずのゴールはそこだとは思うのですが、僕は少なくとも実感が追いついていません。なんかいいこと言ってはいるんだけど乖離がありすぎて、「世界市民を実感できている人はどれだけいるんだろう?」ということを思っています。

 

雨宮:たとえば、縄文時代の集落とかに置き換えると、集落自体がいまでいう世界だったわけだし、江戸時代なら日本が世界だったわけだし、いまは地球っていうのが世界で、っていうような?

 

藤代:それだと少し広すぎます。いまはみんな「人圏」なんですよ。だからまだ牛とか動物とか食べるじゃないですか。次は生命圏で、その次は物質圏みたいになるんですよ。人圏は中途半端なところだっていう感覚をまずもたなくちゃいけなくて、それはゴールではない。

 生命そのものを自分ごとだと思えるか、鉱物から生まれた椅子を「私」だと思えるか、時間、空間、宇宙すらも「私だ」って思えるか、というのが先のレベルにある。そのなかで、人は大事だけど動物は食べていいという中途半端な位置づけのものを「世界」と固定概念的に呼んでいるだけにすぎないっていう解像度を持つのは大事だと思います。

 

雨宮:人類がどれだけを世界として認識しているという範囲の話ではなくて、その個人が世界に対してとらえる思想の領域みたいな話?

 

藤代:グローバルな、よき人間像とされているものが、どこまでを「自分ごと」にしているのかという範囲で言ったとき、「一人残らず、全世界の人」みたいなところまでが、いまなんじゃないかな。

 

河崎:「人間とは何か」とか「自分とは何か」ということを定義しないと、そこは進まない気がする。

 

藤代:うん。……あ、今日はこういう話で進めていいんだっけ?(笑) 

 

河崎:知り合いが、「世界平和」じゃなくて「世界中平和」だって言っていたんだけど、何か一個が平和なんじゃなくて、いろんな平和があると思う。たとえば甘いのが好き、辛いのが好き、甘辛いのが好きって、いろんな違いがあるなかで、それぞれがうまく融合していて調和している。そういう「和える」というか、「和」している感じが大事だと思っています。

 世界平和だと全員が同じになっていく感じだし、「みんな同じがいいよね」っていうのは統合じゃなくて、均一化された工業製品みたいな発想。そうじゃなくて、違いはあるんだけど、いい感じのハーモニーがあるのが「世界中平和」のイメージです。

 

■個人が多様なアイデンティティをもつ

藤代:それは僕も一緒です。さっき言っていた世界中に国が何千もできるというのは、僕もそう思います。組織はインターナショナル、個人はトランスナショナルになっていくんだって思っています。インターナショナルはいまの国連みたいなもの。たとえばA社とB社は分かれていますけど、個人というのはA社の人間でもありB社の人間でもあることができますよね。

 人が集まるアソシエーションの要因に、これからはイデオロギーがより強くなっていく気がします。それは良いことだと思うんですけど、そこに個人が紐づけられると、けっこうカルティックになったりします。イデオロギーとアソシエーションは紐づくんだけど、個人はそこを縦横無尽に行き来する。その軌道の重心に、その人だからこそのアートがあるとか、個性があるとかいう考え方で、国はわかれているけど、人がそこをつないでいくイメージ。

 純真の話に紐づけると、国の数はたぶん何千にもなるけど、そのときの人々はふたつ以上の国に所属しているんじゃないかと考えています。暗号通貨も二個以上もっていて、その国にいったらその国のコインを使いながら、デジタル上に二個も三個ものコインのストックをもっているというイメージです。

 

河崎:いまはアイデンティティが一個しかない。いままでは十人一色だったのが、いまはひとり一色の時代で「個性が大事」って言われている。次の時代には、ひとり十色になっていくと思う。たとえば、日本人でもあり、アジア人でもあり、白人でもあり、アメリカ人でもあり、地球市民でもあり、動物でもあり……みたいな。多様なアイデンティティを個が持つイメージです。

 

雨宮:僕のなかでは、十六角形くらいのサイコロが日常ころころと転がっているような感覚で、その十六面も固定化される必要がなくて、日常の気分でどんどん流動的に変わっていっていいもの。それくらいの感覚で、個人のアイデンティティやナショナリズムみたいなものも変わっていくのかな、と。

 

河崎:日本人って多様化していくときに、すごくいいベースの考え方をもっていて、それは「アイデンティティを固定化しない」というもの。東洋的な「諸業無常」とか「諸法無我」の概念で、最初から世界は存在しないと言っています。最初から「我」はない。ある意味、なんでも受け止められるベースの宗教観や価値観はすごく素敵。今後、いろいろな価値観の人々が台頭していったときに、それを調和できる価値観だなって思う。

 

■「Cift」での拡張家族という実験

藤代:ここまできて、ようやくCiftの話がわかりやすくなると思うんですけど、いまCiftには54人いて、54人全員が共通意識としてそこを世界とみなしてみようという社会実験なんです。「拡張家族」ってメタファー的に使っているけど、「あなたもわたしになれるか」っていうことを実験しています。

 たとえば、(河崎)純真が悲しんでいたら俺も悲しめるのかっていうゲームをしている感覚と言えばいいんでしょうか。そこに、具体的な共助のシステムを敷いて共同体をつくっている。ポイントになるのは、ほぼ全員が多拠点生活者だということです。僕も逗子に住んでいて奥さんがいるけど、奥さんはCiftのメンバーではありません。何が言いたいかというと、Ciftのときの価値観とそうじゃないときの価値観をほぼ全員がトランスしている。圧倒的に自由なんだけど、その共同体に帰ってきたらホームとして感じられる。自由であり、ホームがあるって最高じゃないですか。そういう状態をつくろうとしています。

 

雨宮:その共感性の実験って、現状の肌感覚としてはどうですか?

 

河崎:そうですね…。自分はずっとスタートアップとかITとかをやってきて、社会起業にコミットしようと思ったのが2年前だったんだけど、目標やビジョンを高く掲げて、そこに向かっているのに、なんか全然自分が幸せじゃなかった。ふと振り返ったら、巻き込まれた周りが惨憺たる目に遭っていて……。

 

藤代:それは、社会起業家あるあるですよ(笑)。

 

 

河崎:高い理念を掲げるほど周りが疲弊するのを経験して反省しました。で、Ciftのようなゆるふわっとしたところで、コミュニティがあってみんなでご飯食べているのは楽しくて、そうやって自分が幸せになってくると「なんか世界って意外とすでに平和だな」って、そんなに急がなくてもいいかなってまったりした感じがある。そういう意味で気づきをもらった感じがあります。

 

雨宮:「#今日もいい感じ」というアースデイ東京2018の公式ハッシュタグがあるんですけど、結局「今日もいい感じ」の積み重ねが世界平和みたいな概念だったりもするし、個人の平和がまず大事だよねっていうのは、Ciftが言っていることのひとつなのかなって思う。

 たとえば、仏教だと高次の共感というような概念があって、分かり合えないことを分かり合うことが共感の本質だと言われるんだけど、Ciftの拡張家族が目指しているのは「分かり合う」ってことでいいのかな?

 

藤代:それは解像度の問題で、どこまで握ってどこまで自由にするのかって話なのかなと。共同体のなかで大事なのは、お互いがお互いを信じ込んで、それが幻想なのに真実だと思い込むことなんですね。そのときに一個だけ握っているのは、Ciftに入ったら全員を家族だと思い込むこと。ここだけは握っている。あとは圧倒的に自由。それ以外は、54人いると価値観も人生経験も肩書も違うから、全部違う。それでいいんじゃないかと。ただお互いに家族だと思わなくなるとゲームが終わってしまうので、そこだけは絶対握ることを大事にしています。

 

雨宮:たとえばCiftの拡張家族がスケールしていくと、SDGsのこういうところにつながっていく、みたいなのでいうとしたら?

 

藤代:というか、Ciftのなかで17のゴールを追っている感じです。Ciftが一つの世界だから。たとえばCiftのなかで一人でも餓死しそうになっていたら全力で助けるし、助けられると思う。その意識と態度がそのまま拡張すれば、それが1,000人になっても飢餓になったときには助けられると思う。でも、もし10億人中の1億人とかになったら、いまの自分の力では無理かもしれないな、とか感じてしまいます。

 

■信用ではなく、共感に価値がある時代

雨宮:人間が意識できるのは、150人のスケールまでって言われるよね。

 

河崎:それについては、すごく言いたいことがある。せっかくなのでブロックチェーンの話をしたい。ブロックチェーンって、馬から車、手紙からメール、銀行・国からブロックチェーンっていうものだと確信していて。スマホっていまはみんな当たり前ですよね。ブロックチェーンも10年後には絶対そうなっています。

 何がすごいかというと、ブロックチェーンは信用を陳腐化すること。信用にいままでのような価値がなくなる。これからは共感だけに価値がある時代。たとえば「ここの土地は俺のものです。この手に持っている缶ビールが証明です」といま俺が言ったとして、これを信じる人はいますか? いないですよね。これは俺を信頼してくれていないってこと。信頼があれば信用はいらないです。じゃあ、何があれば、この土地は俺のものだって思いますか?

 

藤代:証明書? 日本国家が発行しているような証明書かな。

 

河崎:じゃあ、日本国家が発行した証明書を持ってきたら信じる人? (会場・挙手多数) これって、つまり日本国家を信用しているということですよね。河崎純真を信用しているわけじゃない。これがいまの信用です。

 もうひとつ、河崎純真を信頼してもらう方法があります。「この土地は俺のものです。この持っている缶ビールが証明です。そうですよね?」(目の前の人がうなづく)。「そうですよね?」(その周りの人たちもうなづいていく)。この会場の中で、この土地が俺のものだと信じていないのは健介だけだとしたら、どうですか?

 

藤代:うーん。全員がそう信じているなら、たぶん純真の土地なんだろうと思う。

 

河崎:ありがとう(笑)。ブロックチェーンがやっているのはこれです。いままでは国が信用を担保していたのを、みんなで信用を担保するのがブロックチェーン。人類有史以来はじめての新しい信用の仕組み。インターネットとコンピュータによってできた仕組みです。

 これの何がすごいかというと、150人の話に戻るんですけど、人間の記憶ってブロックチェーンと同じなんです。たとえば、いまここでもし俺がウンコをもらしたら、みんなの記憶に保存されます。それが口コミとかで拡散されると、俺がいくら「していない」と言っても、みんなは知っている。それってブロックチェーンなんですよね。ブロックチェーンがあれば信用はいらない。信頼でコミュニケーションができる。

 ただ、人間の問題は、この記憶が150人までだということなんです。顔と名前とその人が何をやったかが覚えられるのは150人くらいまで。だからそれ以上の信頼のネットワークは広がりきらなかった。でも、それがブロックチェーンで150人以上に広がるようになった。それがいまなんです。

 

 

■自分たちでゼロから社会をつくる

雨宮:今日は、何か重大発表があるってことなんで、それをぜひ。

 

河崎:はい。実は今日から、http://commons.love(コモンズ)で、新しい取り組みを始めます。テーマは「社会は変えられなくても、つくれる」。ポスト資本主義社会を目指し、誰もが共感によってつながり、すべての人が自由に生き方を選択できる時代をつくります。いまの国や政治のあり方を変えるのではなく、まったく新しい、いまこの時代だからこそできる社会のあり方をゼロからつくる活動です。

 まず実現したいテーマは、「ベーシックスペース」、「ベーシックアセット」、「ベーシックインカム」の3つ。ベーシックインカムを我々自身の手で実現する。たとえば日本全国の自治体でコンサルティングもやっているんですが、空き家や廃校を使わせてもらえるのでそれを無償で貸し出して、衣食住の生活基盤を日本全国で担保していく動きを進めています。行政や大企業も協力していて、産官学で連携しながら新しい社会をつくることを始めている。

 もうシステムとか構想はできているんだけどプレイヤーが足りていないので、ゼロから新しい教育システムをつくったらどうなるんだろう、ゼロから福祉システムをつくったらどうなるんだろう、ゼロから防災の仕組みをつくったらどうなるんだろうみたいな、ゼロから一緒に考えて実現していきたいメンバーを募集しています。

 

雨宮:面白そうだね。

 そろそろ時間もなくなってきたので、2030年の未来についてとか、いま思っていることでもいいので、最後にひと言ずつお願いします。

 

藤代:今回はSDGsがテーマなので、それを踏まえて言いたかったことのサマリーをいうと、SDGsは目的ではなく目標であると、そして目的は世界平和で、でも世界平和に対する解像度が足りないんじゃないかという問いかけでした。かつ重要なのは、平和の定義じゃなくて世界の定義であるということです。

 そうしたときに、一人ひとりが実感の伴う「世界」ってどこなのかを考えていくことで、意識と態度が追い付いてくるんじゃないかと思います。「全地球市民を助けよう」みたいな、なんとなくのコンセンサスは脇において、「自分にとっての世界」を定義して、それを段々拡張していくことを2030年までに一人ひとりがやっていったら、ローカルから始まって最終的にはグローバルにいくような、そんな世界平和が実現するんじゃないかなと思います。

 

河崎:好きな言葉があって、それはアランケイさんが言った「未来を予測するのに一番いい方法はそれを発明することだ」というもの。コンピュータのベースを作った人ですけど、「2030年はこうなったらいい」って予測するんじゃなくて、それを自分たちでつくってしまえばいいんだと。

 SDGsも含めて、未来を実現するために、今後50年くらいはコモンズのような活動をやっていくつもり。こういうことに共感する人といっしょに、家族になりつつ、仲間になりつつ、いい感じにやっていきたいです。

 

柿内:モデレーター手伝いの柿内です。今日の話って、家族とか国のとらえ方から変えていかなくちゃいけないよねって話だったと思う。自分個人というものですら、いろんな角度からいろんな風に見ることができるし、個人というのも一人とは限らない。今回のトーク内容も、話していたのは自分じゃないけれど、自分が話していることのように思って聞いていました。

 

雨宮:僕は、社会というものの、ひとつ下のメタ認知としてフェスをつくっています。フェスを仮想社会として、「理想ってこんな感じかな」っていうのをフェスで簡易的につくって仮説検証して、肌感覚でその直感的な幸福論に紐づくかどうかを確かめるプロジェクトをやっている。

 こうした活動のなかで伝えたいことは、「自然な感受でいてみようよ」みたいなこと。人間ってたくさん集まると、その意識にのっとられて、気づかないうちに不自然に影響されていることがある。でも、自然にこの世界というのをとらえていけば、SDGsみたいなものってすごく当たり前にやっていくべきもの。そりゃ地球にいいほうがいいし、滅んだら困るよねってなると思う。そのくらいの肌感覚にみんながなっていけたら、SDGsは自然と達成していくと思います。

 今日はありがとうございました。