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レポート|アースデイ東京オープンミーティング vol.9「プラスチックのないライフスタイルを考えよう」

11月15日(木)、渋谷LOFT9で「アースデイ東京Open Meeting vol.8」が行われました。「Open Meeting」とは、毎年4月22日に代々木公園で開催される「アースデイ東京」に向けて、さまざまな社会問題を学び、みなさんと一緒にアースデイ当日や日常でもできるアイディアやアクションを考えていこうという取り組み。今回のテーマは、SDGsとプラスチック問題です。

5月10日で自然資源がなくなる!?

渋谷で開催された「Open Meeting vol.8」は土曜の夜にもかかわらず、さまざまな年代の人たちが集まって会場はほぼ満席。テーマへの関心の高さがうかがえます。まずは、アースデイ東京事務局長の河野竜二さんから、アースデイの成り立ち、2020年に20周年を迎えるアースデイ東京についての紹介がありました。

1970年4月22日、「地球のことを考えて行動する日」としてアースデイはアメリカで始まりました

アースデイ東京では昨年から「SDGs」を大きなテーマの一つとして掲げています。

「SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された、持続可能な世界を実現するための2030年までの国際目標です。貧困、飢餓、ジェンダー、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源などにかかわる17のゴールと、169のターゲットから成り立ち、誰一人として取り残さないことを誓っています」と説明するのは、アースデイ事務局のメンバーであり、SDGsライターの松尾沙織さん。

そうしたSDGsの観点からも、私たちの自然資源の使い方に大きな見直しが必要になっています。たとえば「グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)」が毎年発表している「アース・オーバーシュート・デイ」というものがあります。これは、人類による自然資源の消費量が、地球が1年に再生産できる量を超えてしまう日のこと。これによると日本では、なんと5月10日に1年の自然資源を使いきってしまっていることになるのです。

毎分1トンのプラスチックが海へ

近年では、資源枯渇が懸念されている石油を原料としたプラスチックによる汚染問題も深刻です。アメリカのアースデイでも、行政や大学とパートーナーシップを組みながら、使い捨てプラスチックをなくす規制をつくるためのアクションに取り組んでいます。

海に流れ込んだプラスチックは、紫外線などによって5ミリ以下の小さなマイクロプラスチックとなり、それを取り込んだ海洋生物が怪我をしたり、消化ができないために食べられなくなって餓死したりなど、深刻なダメージを受けています。東京農工大・高田秀重教授らのチームの調査によれば、東京湾で獲れたカタクチイワシの8割近くの内臓からマイクロプラスチックが検出されました。

私たち人間も例外ではありません。プラスチックは「汚染物質の運び屋」とも言われていて、そのプラスチックに付着した汚染物質を取り込むことで、私たちの体にも悪影響を及ぼすのではないかと懸念されています。

「便利だからと使い捨てされるシングルユースのプラスチックの多さが問題になっていて、毎分約1トンものプラスチックが海に流出しています。さらには、原料となる石油を採掘する際の人権侵害や環境汚染、輸送する際にも流出事故による生態系破壊が起きたり、加工の途中でも環境破壊が起きたりと、ゴミだけでなく石油にまつわるさまざまな問題があるのです」(松尾さん)

石油依存からの脱却も同時に考えなければ、プラスチックフリーは実現できません。全体から問題を捉え、ゴミとともにエネルギーのことも考えなければならないのです。

もちろんイベントではリユースカップを使用。マイボトル持参の参加者も多数いました

「こうしたなか、世界中でプラスチック規制が広がっていますが、まず私たちにできることとして、4つのRがあります。『Reduce(減らす)』『Reuse(リユース)』、『Recycle(リサイクル)』、なかでも、ぜひ『Refuse(断ること)』をしてほしいと思っています」(松尾さん)

「ゼロ・ウェイスト宣言」上勝町の取り組み

続いて、徳島県上勝町で行政や住民と一緒に「ごみをごみでなくす」活動に取り組んできた、特定非営利活動法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長の坂野晶さんが登壇しました。

「この一週間に自分が捨てたごみを全て覚えていますか?」と坂野さん。もちろん会場には覚えている、という人の姿は見当たりません。

この「捨てて見えないものになったら、考えなくなる」ことが、ごみ問題を深刻化させている根本にあると坂野さんは話します。

特定非営利活動法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長の坂野晶さん

「そもそもごみは、基本的に誰かが要らないと思った瞬間にごみになります。でも、それは主観的なもの。見方を変えれば資源に変えられるはずです。人の意識や行動、ものの使い方、社会の仕組みを変えることで、『ごみ』がごみではなくなるのではないでしょうか」(坂野さん)

焼却や埋め立てに頼るのではなく、「ごみ」と呼ばれるものを「資源」にしていこうと、リサイクルに取り組む上勝町は、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をしました。また、SDGsの達成に向け優れた取り組みを提案しているとして「SDGs未来都市2018」にも選定されています。

45分別で住人の意識も変わった

もともと山奥にある上勝町では、大規模な焼却設備をつくることが財政的にも難しかったことからリサイクルが始まったそうです。

町ではごみ収集車による回収はなく、生ごみは集めません。生ごみ以外のものは、住人がごみステーションに出向いて、13品目45分別のルールに沿って自分で仕分けます。そのリサイクル率は、全国平均が20%なのに対し、なんと81%。生ごみは町からの補助を受けてコンポストを購入し、庭や畑のたい肥に利用します。

この取り組みによって住人の意識も変化しました。過剰包装を選ばないなど、買う前に考えるようになったのです。さらに、無料のリユース拠点「くるくるショップ」、使わない着物や鯉のぼりなどをリメイク/アップサイクルして商品化する「くるくる工房」も生まれました。

「特定のものを分別したり、レジ袋を断ったりするとポイントが貯まるインセンティブをつくるほか、飲食店で使う調味料の量り売りなど、容器持参での買い物をすすめる取り組みもしています。また、企業にも働きかけて、お店を対象に『ゼロ・ウェイスト認証制度』も始まりました。こうした動きは上勝町から始まって、少しずつほかにも広がっています」(坂野さん)

おいしいだけじゃない、料理×SDGs

さて、今回のイベントでは、ケータリングもSDGsにこだわっています。料理を担当したのは、リバースプロジェクトケータリング/ピースデリ主宰の新納平太さん。アースデイ東京では、実行委員長であるC.W.ニコルさんを迎えて毎年開催している「フォレストキッチン」にかかわり、鹿肉ソーセージなどを提供しています。

毎年、アースデイ東京にも実行委員として参加している新納平太さん

今回は、SDGsのゴールに関連した13品の料理を提案してくれました。「3 すべての人に健康と福祉を」「14 海の豊かさを守ろう」「15 陸の豊かさも守ろう」のゴールはもちろんのこと、たとえば、マリネに使われたココナッツオイルはフェアトレードのものを選ぶことで「1 貧困をなくそう」「10 人や国の不平等をなくそう」「16 平和と公正をすべての人に」に結びつき、地域の環境保全の取り組みであるジビエは、「11 住み続けられるまちづくりを」にもつながります。13品すべてが、何らかの形でSDGsのゴールに結びついているのです。

「食を通じて得られるものは栄養だけではありません。その背景から地球の危機的な状況を知ることができます。食はいろいろな価値を結びつけるものであり、私自身も食を通じて考えていく視点を得てきました。私たちの責任としてどんなものを選ぶのか、一人ひとりの消費の選択が環境を変えていくのだと思います」(新納さん)

「おいしい!」と大人気だったケータリング。お皿も陶器や木製のものを用意

「クレヨンハウス」でのプラスチックフリーの取り組み

クレヨンハウス編集部の吉原美穂さんは、「プラスチックフリー」と書かれたエコバッグを持っていました

イベントの最後に登壇したのは、クレヨンハウス編集部の吉原美穂さんです。

東京・表参道と大阪・江坂に店舗をもつ「クレヨンハウス」は作家・落合恵子さんが、子どもの本の専門店としてスタートさせたお店。いまでは、女性の本、おもちゃ、オーガニックの野菜や食品なども扱っています。

吉原さんが編集を担当した、クレヨンハウスが出版する雑誌『いいね』Vol.39では、東京農工大の高田秀重教授の監修によるプラスチック問題を特集。誰にでもわかりやすい内容が、イベント会場でもとても好評でした。

さらに、クレヨンハウスの店舗では「プラスチックフリー フェア」も開催。木のおもちゃ、オーガニックコットン製品など、脱プラスチック商品を集めるほか、プラスチック被害を伝える写真やプラスチックごみの標本の展示、食品ラップの代わりになる「みつろうラップ」のワークショップなどを行ったそうです。

メーカーとお客さまの真ん中で出来ること

「こうした取り組みのなかで、自分たちの商品の見え方が変わってきたように思います。オーガニックという視点で選んだものでも、そこにプラスチックフリーという視点を加えると、評価が上がる商品もあれば、そうではないものもありました」(吉原さん)

たとえば、メーカーによっては安全性を担保するために袋での梱包が必要で悩んでいたり、購入するお客さんの考え方もさまざまだったりします。そうしたなかで、お客さんとメーカーさんの真ん中にいる小売店として「まずはプラスチック問題について、一緒に知っていただくことが大切だと考えています」と吉原さん。どういうことを踏まえて商品を選んだらいいのかをまとめた「プラスチックフリーなおかいものガイド」の10項目も紹介してくれました。

みなさんと一緒に考える「アースデイ東京」

自治体や小売店、食を通じた取り組みなど、さまざまな立場からSDGsやプラスチックの問題について語り合った、今回のOpen Meeting。このあとの懇親会でも、あちこちで交流の場ができていました。こうした取り組みを、どう広げて、実践していけるのか。アースデイ東京では、みなさんと一緒にさらにアイデアを出し合っていきたいと思っています。

学習院大学の学生さんを中心したチーム「innovation team dot」がトークの内容をグラフィックレコーディングでまとめてくれました!

次回のOpen Meetingは1月24日に開催予定。中学生から大学生までが集まる「SDGs for School」のメンバーと一緒に行う予定です。アースデイ東京に来たことがある人もない人も、どなたでも大歓迎。みなさんのご参加をお待ちしています!

 

(Text:中村未絵)