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レポート|アースデイ東京オープンミーティング vol.9 後編「SDGsで目指す、地球1個分の暮らしってどんなもの?」

 

1月24日(木)、渋谷LOFT9で「アースデイ東京Open Meeting vol.9」が行われました。「Open Meeting」は、毎年4月に代々木公園で開催されるイベント「アースデイ東京」当日に向けて、さまざまな社会問題を学び、みなさんと一緒に解決のためのアイデアやアクションを考えていこうという取り組み。今回のテーマは「SDGsで目指す、地球1個分の暮らしってどんなもの?」です。

 

みんなが日本人と同じ暮らしをすると……

「地球1個分の暮らし」について考えるときに、参考にしたいのが「エコロジカル・フットプリント」です。これは、人類が地球環境に与えている負荷の大きさを測る指標のこと。この指標によると、全世界の人がいまの日本と同じ暮らしをすれば、なんと地球が2.8個分も必要になると言われています。

SDGs(持続可能な開発目標)を達成するためには、私たち一人ひとりが地球1個分の暮らしを目指していくのも大事なこと。4月に開催するアースデイ東京2019でも「Everyday Earthday 〜地球 1 個分の暮らし〜」をキャッチコピーにしています。

この日、会場ではうどんアーティスト・小野ウどんさん、菜食の人でも食べられる椎茸だしを広める椎茸祭さんによって、手打ちうどんがふるまわれました。もちろん来場者の多くがマイ食器持参です。うどんには、東京あきるの市の自然栽培小麦を使用。地元産の食材を選ぶことでエコロジカル・フットプリントが大きく減らせるのです。

日本はフードマイレージの問題も深刻です。東京で他県の作物を食べる場合の二酸化炭素排出量は、東京で東京の作物を食べる場合と比較しておよそ13倍にも増えます(農水省 資料)。

 

会場で麺を手打ちしてくれた小野ウどんさん(左)と、椎茸祭の中圓尾岳大さん(右)

 

80億人の暮らしを支える地球

第一部のトークでは、国際的なネットワークをもつ環境保全団体「公益財団法人WWFジャパン」のシニアアドバイザー・石原明子さんが登壇。

WWFでは、冊子「地球1個分の暮らしの指標~ひと目でわかるエコロジカル・フットプリント」や「生きている地球レポート2018」などを発表しています。レポートのデータに基づきながら「80億人の期待とたった1つの地球」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

 

 

「いま地球には約76億人が住んでいて、これから80億人になり、2050年には100億人になると言われています。その一人ひとりが『こういう風に暮らしたい』『あれを食べたい』といった希望や期待を持っています。人類が目指そうとしているのは、誰もが安全・安心に暮らせて、飢えがなく、必要な医療を受けられ、子どもたちが学校に通えるような社会。それはSDGsが掲げる『誰ひとり取り残さない』と同じこと。ところが、それを支える地球は1つしかありません」と石原さん。

現在でも、約10億人が飢餓で苦しみ、約7億7千万人が清潔な水へのアクセスができず、そして、約14億人が安定した電気を得ることができていないのです。自然からの富は無限ではなく、その分配も公平ではありません。こうした社会を変えていくためには、人類が「共通の認識」をもつことが必要です。

 

 

石原さんは、その共通認識が、エコロジカル・フットプリントであり、地球の生物多様性の劣化を示す「LPI:Living Planet Index(生きている地球指数)」なのだと話します。

LPIとは、世界の4,000種を超える哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の合計1万6,000以上の個体群を調査し、個体数がどれくらい減少したかを基に計算したもの。それによると、1970~2014年の間に平均60%も減少したことがわかります。その大きな原因は、私たち人類による地球の「使いすぎ」です。

「レジャーやアートだけでなく、天然由来の医療品、スマートホンに欠かせない希少金属(レアメタル)、など、さまざまな分野で私たちは自然の恩恵にあずかっています。一方、平和を脅かすような資源の奪い合いも起こっています。有名な『SDGsウェディングケーキモデル』というのがありますが、SDGsで達成を目指す17の目標を、『経済』、『社会』、『自然資本』の3つの層に分けたとき、いちばんのベースになるのが自然資本。自然資本がなければ、経済も社会も成り立たないのです」(石原さん)

OpenMeetingの会場は満席。石原さんのお話に真剣に耳を傾けていた

 

しかし、自然資源の利用可能量を表す「バイオキャパシティ」は過去40年間で60%減少。エコロジカル・フットプリントを見ても、地球が再生産できる資源量を70%もオーバーしています。自然資本というベースが持続可能なものになるように、立て直していく必要に迫られているのです。

 

 

石原さんは「地球1個分の暮らしとは、日本でいえば1963年くらいの暮らし。国でいうと、インドネシアやベトナム、ネパールやキューバのような暮らしのイメ―ジ」と話しますが、そこにテクノロジーやアイデアが加わることで、新しい暮らしの可能性が見えてくるはずです。

「これから、大量消費はもちろん、働き方、食べものなど、ライフスタイルを変えていかなくてはいけません。新しい価値観と工夫を生み出していく必要があります。大変な時代のように聞こえるかもしれませんが、この時代に生まれたことの責任を果たすのは、とてもワクワクすることでもあると思うのです」(石原さん)

 

あなたの暮らしは、地球何個分?

 

 

石原さんのお話を伺ったあとは、会場のお客さんたちと一緒にワークも行いました。NPO法人 エコロジカル・フットプリント・ジャパンのサイトで18の質問に回答すると、自分の暮らしが地球何個分なのかを簡単に調べることができます。その場で参加者それぞれが実際に計測を行い、その結果を近くの席の人たち同士でシェアしました。

「地球3個分……」という人もいれば、「ほぼ地球1個分」という人も。日常生活のなかで意識していることを参加者に尋ねてみると、なるべくエアコンを使わない、肉を食べない、職場まで自転車に乗るなど、さまざまな工夫があがっていました。

みなさんの暮らしは地球何個分でしょうか。気になった方は、ぜひサイトにアクセスしてみてくださいね。

 

さて、会場が盛り上がったところで、OpenMeetingVol.9第二部へ。クロストークに続きます。

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※トップ画面の写真は、Innovation team dotから参加してくれたグラフィックレコーダーのお二人!